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使い継がれる秘訣は?

date:2026.03.04

こんにちは、清水です。

先日、覚王山駅の近くにある「揚輝荘(ようきそう)」を訪ねる機会がありました。

 

揚輝荘は、デパート・松坂屋の初代社長である第15代伊藤次郎左衛門祐民が、大正から昭和初期にかけて築いた別荘です。

もとは10,000坪もの広大な敷地があり、茶室や庭園、宿泊所のほか、弓や馬で遊ぶ場所なども集められた、いわば「テーマパーク」のような場所だったそうです。

 

今回はその中でも、特に聴松閣(ちょうしょうかく)という建物をじっくりと見学してきました。

 

聴松閣は、昭和12年に完成した迎賓館です。

元々は大切なお客様をもてなすための建物で、1階には食堂やサンルーム、2階には来客用の寝室、そして地下にはなんと舞踏場や用途不明のトンネルまである、非常に魅力的な造りになっていました。

 

私が今回この建物を見て一番強く感じたのは、「ここまで長い間、色々な使い方をされて現代に残っていることの凄さ」です。

 

欧米に比べ、日本では同じ建物を長く使い継ぐ文化が根付いていないと言われます。

しかし、この聴松閣は昭和12年に完成した後、運よく戦火を逃れ、戦後は進駐軍の住まいに。

その後、男子寮や女子寮として使われ、現在は名古屋市指定有形文化財として公益財団法人が管理・一般公開されています。

 

迎賓館から寮へ、そして文化財へ。

時代ごとに役割を変えながらも、解体されることなく現代まで大切に残されている事実に、深く考えさせられました。

 

住宅建築に携わる身として、建物の性能面にもつい目がいってしまいます。

正直なところ、住宅性能には特別すごい工夫等は見られませんでした。

例えば現在の私たちが手がける自社物件の快適な温熱環境と比べてしまうと、夏の暑さや冬の寒さにはかなり厳しいものがありそうです。

それでも、細部のこだわりや居心地の良さを思うと、この建物が生き残ってきた理由が分かるような気がしました。

昭和に建てられた迎賓館の洗面台。窓があり、その隣にはコンパクトな収納棚が付いている

 

大工の高度な技術が光る床や壁、滑らかな階段の手摺り、そして埋め込みの照明など、細部の装飾一つひとつが、住む人や訪れる人の「愛着」に繋がる造りになっていました。

また、外観のハーフティンバー様式も、時代や地域を考えると唯一無二のデザインであり、「これを大切にしたい」と思う人が多くいたことにも頷けます。

室内も単純に豪華というだけでなく、ここで過ごしたいなと思わせる居心地の良い空間が多くありました。

昭和に建てられた迎賓館の照明、天井に埋め込まれている

 

現在、日本では空き家問題が深刻になりつつあります。

その中で、新築住宅を手掛ける私たちとしては、正直なところ悩ましい部分もあります。

今回聴松閣を見学して感じたのは、建物そのものの魅力は力になる、ということ。

 

今の住まい手が「長く残したい」と心から愛着を感じ、そして後々の時代の人が「自分たちもここに住みたい、使いたい」と思ってくれるような、そんな魅力と居心地の良さを持った家にする。

性能や機能性の向上はもちろん大切ですが、それと同じくらい「長く愛される空間づくり」の重要性を改めて感じる見学となりました。

昭和に建てられた迎賓館の床。色の違う木を敷いて模様をつくっている

 

建築や歴史がお好きな方は、ぜひ一度、覚王山の揚輝荘へ足を運んでみてください。

清水でした。

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